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経営労務監査

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会社経営と経営労務監査

会社は資本を調達・運用して利益を追求することを基本的な目的としていますが、会社制度の実態からみると、それは「資本と労働」を結合して所定の目的を達成するための仕組みであり、「法人(corporation)」は自然人と同様に「権利義務」の主体としての社会的存在といえます。社会的存在である会社は、経営の説明責任を果たすことができる体制を整え、自己統治能力と経営プロセスの透明度を高めなければなりません。そのために「会社法」はコンプライアンスの徹底と、特に大企業に対しては会計監査を含む内部統制システムの構築を義務付けております。

しかし会社法では、会社を構成する資本と労働の二大要素のうち、主として「資本の運営」(=経営資本の調達、運用、再投資などと、経営執行機関の設計など)の側面に関する法制であり、もう一方の重要な構成要素である、会社の業務活動の実質を担う「労働」については全面的に労働法制に委ねている状況にあります。従って、会社の健全性の全貌を理解し掌握するためには「労働」に関しても監査的な手法で適切な評価を行うことが、経営的にも社会的にも強く要請されてきていると考えられます。そのことは、近年の一部株式上場に当たって、従来の財務監査に加えて労務管理監査も重要な要素となっていることからもうかがえることです。

換言すると、会社の経営資本運営の側面について求められている法令遵守と内部統制システムの構築が、ある意味で労働についても要請されていると言えるのであって、 実態として会社における業務遂行の実質を担う「労働」についての法令遵守適切な処遇制度、並びに快適な職場環境の確保をすることなくして持続的な成長を可能とする会社経営はできないものと考えるものです。その意味からも、今日の複雑化した会社経営における人材の効果的な活用のために、多種多様な労働法規を適法で適切な事業運営の視点で整理して把握し、人材配置についても一定の基準で評価することで「労働」の最適な活用に関する「労務監査」が必要となってきていると言えます。 

監査の種類

ここでいう監査とは、会計監査と労務監査の2種類を指します。そして両監査とも広義の業務監査(販売、調達、製造、システム、財務、会計、労務等々)の1つと考えることができます。

会計監査とは

会計監査とは、「経営活動における経営資源のうち、資本の運用結果について」の監査であり、資本の把握単位である貨幣の運用状況について、企業会計原則を背景に、合法性と合理性の視点から経営活動の結果を評価し、提言・勧告を行うものと考えることができます。また経営陣という、ある意味で企業運営上の重要かつ最大の人的資源については、資本の監査である会計監査を通して評価を受けていると言えます。

労務監査とは

労務監査とは「経営活動における経営資源のうち、労働の活用結果について」の監査であり、「労働契約(労務提供の対価として賃金を獲得)」に基づく労働の活用状況について、合法性と合理性の視点から経営活動の結果を評価し、提言・勧告を行うものです。経営活動における資本と労働の結節点として、「人件費・賃金」を位置づけることで企業組織(経営活動の実行単位)、労務管理制度諸規程を有機的関連のもとで把握できます。労務監査は、対象とする労働というものが、量的に抽象化して把握することが難しく、現状では任意監査という位置づけですが、今後ますます重要となる監査であり、経済の発展した社会における企業経営のなかで、成立するものと考えられます。労務監査は将来、法定・任意監査の違いにかかわらず、先進国における企業経営にあっては会計監査と同等あるいはそれ以上に重要な監査と位置付けられる可能性があります。資本とともに、企業の二大経営資源の一つである労働(経営組織に組み込まれた人間活動)こそが、その実質的な対応を可能とし、そのためには労働の適切な処遇が最も重要な経営課題になると考えられるからです。

 

経営労務監査の構成

経営労務監査は、「労務コンプライアンス監査」と「人材ポートフォリオ監査」から構成されています。

 

労務コンプライアンス監査

会社の人材マネジメント(労務管理施策)に関する主要な制度と、規程類の適法・適切性に関する監査のことをいいます。経営管理体制の骨格となる組織、職務権限などの制度確立と体系的な規程類の整備を基礎として、運用上の核となる人事制度、人事労務関係の規程・協定・法定帳簿などの整備状況を監査します。また、企業の基本戦略、人事の基本方針を確認した上で、制度運用上の問題点や違法とはならないまでもリスクが大きく望ましくないと考えられる点についても改善の提言を行います。

■ 労務コンプライアンス監査の具体的な内容

1) 労働法令関係:労働基準監督署および労働局が行う臨検調査に準じた監査

  • 人事・労務関係規程、労使協定【参考資料】の整備状況の監査
  • 人事・労務関係書類(法定帳簿、人事労務書式)【参考資料】の整備状況の監査
  • 人事・労務制度の運用状況を確認するための帳簿・書式サンプル監査
  • 人事労務担当者への制度運用に関するヒアリング監査
  • 各事業所への制度運用に関するヒアリング監査

2)社会保険関係:公共職業安定所、年金事務所が行う臨検調査に準じた監査

  • 労働保険事業所関係の成立状況・保険料申告状況の監査
  • 雇用保険適用状況・手続状況の監査
  • 社会保険適用状況・手続状況の監査

人材ポートフォリオ監査(人材配置、組織分析、従業員意識調査)

人材配置の適切性に関する監査のことで、労務に関する様々な経営指標のうち、労務諸表として人材バランスシートと労務プロセスシートを作成して客観的な数値での効率性などを把握します。同時に従業員の意識調査を行い、主観的な雇用満足度を調査して、労務の効率性との相関を検討します。これをP/S(Performance & Satisfaction)評価、つまり、企業運営の成果である業績 P(Business Performance)と、従業員への意識調査の結果を雇用満足度 S(Employee Satisfaction)として表し、それらを照らし合わせることによって仕事の充実度を推定していきます。

 

以上の各監査を総括して、最終的に「経営労務監査報告書」を作成します。 具体的には、監査所見として

    • 労務コンプライアンス監査
    • 人材ポートフォリオ監査
    • 従業員意識調査

そして、「監査総括」として、必要な是正提言あるいは改善提言を行い、付属添付資料とともに、事業主あてに提出することになります。企業における経営労務監査のサイクルは、1年~3年に1回程度の割合(ただし、近年の労働法関係の頻発する法改正にあっては1年に1回程度が良好)で行うことが望ましいです。

経営資源(=ヒト)を第一とお考えの企業様へ TEL 03-6869-1558

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